IBERIT 50mm f/2.4 レビュー ~ 武石修

初めまして。武石修と申します。この度、ご縁があってお声がけ頂き、この「KIPON PLAZA」でレンズの作例を掲載させてもらうことになりました。普段は文章を書いたり写真や動画を撮ったりするのが仕事です。毎回1本のレンズを紹介していきますので、よろしくお付き合い頂ければと思います。

初回のレンズはHandeVisionの「IBERIT 50mm f/2.4」です。私はスナップ写真をライフワークにしていることもあり、今回は東京の下町である上野界隈をスナップすることにしました。

■ コンパクトな標準レンズ

IBERIT 50mm f/2.4は、35mmフルサイズセンサーに対応するマニュアルフォーカスレンズです。ソニーEマウント、富士フイルムXマウント、ライカMマウントがラインナップされています。

50mmの単焦点といえば「ザ・標準レンズ」ということで、古今東西様々なタイプが発売されてきました。このIBERITシリーズはミラーレスカメラに最適化されているそうで、イメージセンサーで最高の性能を発揮する設計になっているとのことです。

50mmの単焦点レンズといえば多くはF1.4やF1.8で、そこから見るとこのレンズは開放F2.4であり1段程度暗いことになります。ただ、そのぶん小型の作りになっており、実際フィルター径は49mmです。そのため、ミラーレスカメラに装着した際にコンパクトに収まります。

鏡胴はしっかりした金属製で、昔のMFレンズを思わせます。ピントリングのヌメッとした感じは、現代のAFレンズではまず味わえないものでしょう。じっくりとピントを合わせて撮るというステップが楽しくなります。

■ 夕時の上野界隈を歩く

単焦点レンズ、それも王道の50mmで何を撮ろうかと色々考えましたが、夏から秋に向かう街を情緒的に撮ってみたくなりました。そこで向かったのがJR上野駅。かつては北の玄関口と呼ばれて栄えたターミナル駅です。駅の周辺は再開発が進み、昔の雰囲気も少なくなってきましたが、まだまだ風情のある景色を見ることができます。

撮影を始めたのは16時過ぎ。まず向かったのは上野公園です。不忍池に佇むボートを木の枝を前ボケにして写しました。開放F2.4と暗めだったのでボケの量は心配でしたが、適度にボケてくれて並んだボートが引き立ちました。

1/400秒 / F2.4 / ISO100

不忍池の周りは散歩やジョギングをする人で賑わっていました。そんな中に一人池を眺める人物がいたのでパシャリ。ここも、ちょうど走ってきた人がよい前ボケになりました。こういう風景にはモノクロがよく似合います。

1/250秒 / F2.4 / ISO100

不忍池の中央付近にある弁天堂のそばには、屋台のリヤカーがおいてありました。こちらも絞り開放ですが、ピントを合わせたタイヤの凹凸がしっかり描写されています。

1/30秒 / F2.4 / ISO100

上野公園を一度出てその周りを歩いてみます。すると昭和の面影を残す古い建物が目に入りました。料亭でしょうか、夕暮れの空にオレンジ色の光がきれいでした。後ろの高層ビルが、ここが都会であることを思わせます。

1/60秒 / F2.4 / ISO800

またブラブラと歩いていると年季の入った赤提灯がありました。ピントの合ったところは絞り開放でも十分シャープに写ります。一方で背景のボケは自然であり、良く言えばオールドレンズ風のやわらかさがあります。

1/60秒 / F2.4 / ISO2500

続いては有名な商店街であるアメ横に移動してきました。ここでは高架を走る電車と看板を収めてみました。レンズの発色もしっかりしている印象です。

1/80秒 / F2.4 / ISO100

一時期に比べれば歩く人の数も少ないですが、お客さんも戻りつつあるようです。意外と言っては失礼ですが、かなりしっかりとしたコントラストが出ていて驚きました。

1/100秒 / F4 / ISO100

喫茶店の食品サンプルが美味しそうに撮れました。背景の玉ボケを見ると、年輪のような模様もなく、また画面の端の方でも丸さを保っており、かなりきれいな部類になると思います。このレンズの大きな特徴でしょう。

1/80秒 / F2.4 / ISO100

ホワイトバランスの設定で画面が青くなるようにし、都市の心象風景的に写してみました。電柱などの構造物も十分な解像力で描写されています。電車をブレさせるために1/8秒のスローシャッターにしましたが、α7 IIIの手ブレ補正と相まって手持ちで撮影できました。

1/8秒 / F8 / ISO200

このあたりは自動車交通の要衝でもあるので、車線が多いのが特徴。大きな道路と横断する人を狙いました。パンフォーカスにするためにF8に絞り、東京の東部ならではの地名も写し込みました。ホワイトバランス調整で少し緑色を入れて、印象的に仕上げてみました。

1/50秒 / F8 / ISO1000

再度上野駅に戻ってきて、歩道橋から正面側を撮影してみます。人の目に近いと言われる画角なので、誇張感のない自然な描写です。いろいろな人が行き交う大きな駅を表現できたのではないでしょうか?

1/50秒 / F4 / ISO100

■ MFレンズの入門に

開放F2.4と聞いたときには、ちょっと暗いのではと感じました。が、実際に使ってみると適度なボケを得られることや、カメラの感度を上げれば夜でも手持ち撮影がどんどんできることなど、オールマイティに使えるレンズだということがわかりました。

その上でかなりコンパクトなので持ち運びしやすく、MFではありますが普段遣いにもぴったりでしょう。むしろ、自分でピントを合わせるという楽しさもあります。ミラーレスカメラを買った人で、MFレンズに挑戦したいなら小さくておすすめの1本だと思いました。

1/50秒 / F2.4 / ISO800

関連記事を読む